遮音性の判断
東京23区の中古マンションのトラブル・クレームで一番多いのは音の問題です。騒音のない中古マンションは住み心地がいいということになりますが、遮音性は住戸と住戸の間の壁、天井(上階の床)、さらに住居内の部屋と部屋の間の壁など、様々な角度からチェックが必要です。
住戸と住戸の間の壁のことを戸境壁といいます。戸境壁は、高層マンションを除き、
通常、鉄筋コンクリートでつくられています。この鉄筋コンクリートの厚さと、戸境壁の
仕上げ方法によって、遮音性がかなり違ってきます。
鉄筋コンクリートの壁の厚さは、隣接する住戸の間取りが居室同士、あるいは浴室同士
の場合で、最低でも一八センチ以上必要です。
隣接する住戸の間取りが異なる場合、たとえば寝室の横が隣戸のキッチン、浴室、トイ
レなどの水廻りになっている場合、あるいはエレベーターの場合には、戸境壁をもっと厚
くする必要があります。この場合、厚さ一八センチでは水音やエレベーターのドアの開閉
音が聞こえるでしょう。
戸境壁の仕上げ方法は、コンクリートにクロスを直接貼る「クロス直貼り」と「二重構
造」(コンクリート壁の両側に間柱を立て、そこに石膏ボードを貼ってクロスで仕上げる方
法)に大別することができます。
このうち、遮音性に優れているのはクロス直貼りのほうです。
二重構造にすると、コンクリートの壁の両側に密閉された空気層ができ、太鼓現象といってテレビの音など特定の周波数の音が共振する(特定の音が聞こえやすくなる)ので、遮音性が低下してしまうのです。
納・キッチン・トイレなどを仕切る壁のことを「間仕切り壁」といいますが、住戸内の遮
音性はこの間仕切り壁の厚さで決まります。
一般に、間仕切り壁は鉄骨の間柱の両側に石膏ボードを貼り、クロスで仕上げています。
この石膏ボードが厚いほど、遮音性が高くなります。
東京23区の中古マンションで使用される石膏ボードの厚さには、九・五ミリと一二・五ミりの二種類が
あります。当然、一二・五ミリのほうが遮音性に優れています。
間仕切り壁の石膏ボードの厚さは外から見ただけではわかりませんが、販売事務所など
にある「設計図書」のなかの「室内仕上げ表」で確認できます。室内仕上げ表は住戸内の
壁、床、天井の素材や施工方法などについて記載したもので、洋室の壁の欄の「PBO・
○」が石膏ボードの厚さを示したものです。(PBとはプラスターボードの略)また、石膏ボードがどこからどこまで敷設されているかによっても、遮音性が違ってき
ます。石膏ボードが天井のスラブ(コンクリート)と床のスラブに届いていないと、隙間
から音がもれてしまいます。
つまり、遮音性を高めるには、石膏ボードが床スラブから天井スラブまできちんと届い
ている必要があるわけです。二重天井や二重床の場合、仕上げ材までではなく、スラブま
で届いているかは、図面で確認する必要があります。
東京23区の中古マンションの騒音トラブルで最も深刻なのは上下階の音です。音は、上の階で人が歩いたり、物を落としたりすると床のスラブが振動し、下の階に伝わります。こうした床スラ
ブの振動を抑えることができれば、遮音性能も高くなります。
スラブの振動を抑えるには、スラブの厚さを厚くする、スラブの梁間面積を小さく分割
するという二通りの方法があります。
スラブの厚さは、一七〇ミリで住宅金融支援機構の金利基準適用住宅になりますが、最
近では二〇〇ミリが一般的になっています。
スラブ自体の遮音性能がよければ、厚さが増すほど振動が下に伝わりにくくなります。
しかし、たとえば厚さ二七〇ミリと二〇〇ミリを比較し、二七〇ミリのほうが遮音性で絶
対優位かというと、必ずしもそうとは言い切れません。スラブの工法やつくりにも遮音性
が左右されるからです。
「中空スラブ」「アンボンドスラブ」など梁の数を少なくした特殊工法のマンションもあ
りますが、こうした工法では、通常よりもスラブの厚さが増す一方で、梁の数が少ないう
えにスラブの間に隙間ができるため、遮音性が低下してしまう場合もあるので注意が必要
です。
床スラブが厚くなっていても、スラブの梁間面積が広くなると、振動を十分抑えること
ができなくなってしまいます。したがって、遮音性を高めるには、スラブの梁間面積を小
さく分割するという工夫が必要になります。
スラブの梁間面積は、柱と柱をつなぐ太い梁である大梁の間に、小梁と呼ばれる小さめ
の梁を渡すことで小さく分割できます。間取り図で大梁と小梁の位置を確認すれば、スラ
ブの梁間面積がわかります。
種類があるので、単純にスラブ厚だけで床の遮音性を判断することはできません。
そこで、注目したいのが「遮音等級」という遮音性能を示す数値です。遮音等級は、住
宅性能表示制度では「適用等級」と呼ばれるもので、遮音性能の指標と位置づけられてい
ます。
遮音等級には、住戸内で床に軽いものを落とした時などに発生する「軽量衝撃音」と、子供などが飛び跳ねた時や重いものを落とした時などに伝わる「重量衝撃音
(」H)」があります。
また、LLとLRを組み合わせた「」値」という単位もあります。
いずれも数値が小さいほど遮音性能が高くなります(四〇、四五、五〇、五五などの数
値があり、LLl四五、LHー五五、Ll五〇などと表記されます)。
スラブの遮音等級は重量衝撃音(LH)で表されます。
軽量衝撃音は、床を仕上げる際の工法などの影響を受けます。床の仕上げに使う材料に
関しては、フローリングよりもカーペット、コルクなどの弾力性のあるもののほうが優れ
ています。
次に、床の工法には「直床」と「二重床」がありますが、太鼓現象(共振により音がよ
く響く)にならない施工上の工夫がしてあれば二重床工法のほうが遮音性が高くなります。
床の遮音性を示すLHとLLのどちらを重視したらいいのかといえば、この二つを組み
合わせたL値も含め総合的に判断するべきでしょう。
D値は、たとえば隣戸でピアノを弾いていた場合の音のレベルと、こちら側で聞こえる
音のレベルを比較し、音が戸境壁を通過する時にどの程度減少するかを表すものです。音
のレベルが隣戸で九〇デシベル、こちら側で四〇デシベルなら、五〇デシベル減っている
のでD値五〇になります。
デシベル(dB)は音圧レベルの単位で、数値が大きいほど音が大きいことを示してい
ます。
戸境壁を通過する際に音が減少するレベルを表しているわけですから、D値の数字が大
きいほど遮音性能が高くなります。
D値には、四〇、四五、五〇、五五などの等級があり、Dl四五、Dl五〇などと表記
されます。Dl五〇になると、隣戸のテレビの音や会話が通常では聞こえなくなります。
中古マンションの上階、隣戸だけでなく、外部からの騒音もシャットアウトしないと、住み心地のいい居
住空間を確保できたとはいえないはずです。
特に、幹線道路に面していたり、近隣に音の出る工場などがある場合には、外部の騒音
が気になるはずです。
外部からの音が一番伝わってくる場所は、壁ではなく、窓などの開口部です。窓を開け
ている時と閉めている時とでは、自動車やピアノの音など外部の音の聞こえ方が全然違い
ます。
つまり、外部からの騒音をシャットアウトできるかどうかは、サッシなどの開口部の遮
音性能で決まるのです。
サッシの遮音性能は、遮音等級「T値」で表されます。T値には等級なし、一〜四まで
の五つの等級があり、数値が大きいほど遮音性能が高くなります。
最も遮音性能等級が高い「T四」は、四〇デシベルの遮音効果があることを示していま
す。外部の騒音レベルが八○デシベルでも、サッシの遮音性能がT四なら、室内の環境は
四〇デシベルになります。
四〇デシベルというと、図書館の読書室と同レベルですから、相当静かです。このT四
を実現するには、二重サッシにする必要があります。
一般的に使われているアルミサッシは「等級なし」と最も等級が低く、一五デシベル程
度の遮音性能しかありません。
なお、サッシと同じく開口部にあるガラスの種類(シングル、ペアガラス)に関しては、
遮音性能にはあまり関係ありません。ペアガラスは二枚のガラスの内部で起きる共鳴現象
により、単板で厚めのガラスより遮音性能が劣るといわれています。
の排水管が縦に通っています。このパイプスペース周辺の遮音対策も重要です。
通常、パイプスペース周辺には、排水管に遮音シートやグラスウールを巻くか、パイプ
スペースの間仕切り壁にグラスウールを入れるといった遮音対策が施されています。
また、石膏ボードを二重にして、床スラブから天井スラブまで施工することで排水音を
伝わりにくくすることもできます。こうした遮音対策を組み合わせている物件もあります。
パイプスペースの遮音対策も設計図書に記載されています。こうしたところまでチェツ
クする姿勢が大切なのです。