耐震性・耐久性
大地震(マグニチュード六・七〜七・二程度)が三〇年以内に発生する確率は七〇%程度
だそうです。
阪神・淡路大震災ではたくさんの方がお亡くなりになりましたが、その多くが建物の倒
壊によるものでした。
耐震強度偽装問題の発覚によって中古マンションの耐震性がにわかにクローズアップされま
したが、地震国である点を考慮すると、もともと耐震性あるいは耐久性はマンション選び
の重要なチェックポイントだったのです。
そこで、マンションの耐震性・耐久性に関連する「構造」「工法」「水セメント比」「設
計コンクリート強度」「かぶり厚」「配筋・外壁」などに関する知識を、以下の部分をしっ
かり読んで身につけておいてください。
なお、現在の建築基準法の耐震基準(「新耐震基準」)は一九八一年六月に改正されたもので、これ以降に建築確認申請がなされたものについて適用されています。七八年の宮城
県沖地震で建物の倒壊・崩壊が相次いだことで、従来の耐震基準が見直されたのです。
新耐震基準を満たしている建物の震災による被害に関しては、震度六程度の大地震でも
「建物にある程度の被害が発生しても倒壊・崩壊は起こらず、人命を確保できる程度」の
被害とされています。
れは、マンションの敷地の性質や堅い地層の位置を調べたもので、中古マンションのモデルル
ームや販売センターでも確認できます。
中古マンションなどの建築物には、地盤と建物の間に、建物を支える「基礎」と呼ばれる部分があります。建物の基礎は、ボーリングデータなどで判明した地盤の状態や建物の形状
などを勘案して、どのようにつくるか決定されます。
建物の重量や規模によって基礎のつくり方は異なりますが、マンションのような重い建
物の基礎は、必ず良好な地盤に届いている必要があります。
ここでいう「良好な地盤」とは、N値(六三・五キログラムのハンマーを七五センチメ
ートルの高さから自由落下させ、サンプラーと呼ばれる金属性のものを三〇センチメート
ル貫入させるのに要する打撃回数のこと)が五〇以上ある地盤のことです。N値が一なら、
一回ハンマーを落としただけで条件を満たすということですから、相当軟弱な地盤という
ことになります。
マンションの基礎工法には、直接基礎(べた基礎)工法と杭基礎工法があります。一般
に、良好な地盤が地表近くにあれば前者、地表から深いところにあれば後者が採用されま
す。
杭基礎工法の場合、良好な地盤に達するまで杭を打ち込むのですが、杭基礎の先端を支
えるのに適した地盤のことを「支持層」といいます。日本建築学会では「N値五〇以上の
層が五メートル以上」あれば支持層とみなしています。N値五〇以上の層が五メートル以上連続している地盤まで杭を打ち込み、建物を支える基礎とすることが望ましいというこ
とです。
良好な地盤が地表近くにあっても、その深さが敷地内で大きく異なる場合には注意が必
要です。地盤が不均一だと、基礎がしっかりしていなければ不同沈下(不均一に沈む現
象)が起こり、建物が傾く恐れがあります。
地盤が軟弱だった場合には、地盤改良や地盤補強といった地盤対策を施しているはずで
すが、「地盤改良をしていれば安心」と一概にいうことはできません。
ボーリングデータによるN値や、N値五〇以上の地盤の位置(地表からどのくらいのと
ころにあるか)は設計図面の構造図に記されています。必ず確認しておきましょう。
ンクリートでつくる「鉄筋コンクリート造(RC造)」が一般的です。
一定以上の高さのマンションになると、従来は柱と梁の中心に鉄骨を入れ、周囲を鉄筋
とコンクリートで囲む「鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)」や、さらに超高層マンシ
ョンになると、柱と梁に鉄骨を用い、建物がしなやかに揺れることで大地震に対応する構
造の「鉄骨造(S造)」や、最近では「高強度コンクリート造(RC造)※」が主流とな
ってきています。技術の進歩で今や一〇〇メートルを超える建物も、この「高強度コンク
リート造(RC造)」が使用されています。
※高性能AE減水剤を用いて水セメント比を低減し、各種混和材を用いてつくる高強度
コンクリート。
一方、構造材の組み立て方には「ラーメン構造」と「壁式構造」があります。ラーメン(ドイツ語で「枠」という意味)構造は柱と梁で骨組みを構成し、建物を線で支える構造
です。こちらのほうがマンションでは一般的です。ラーメン構造には、耐震性を備えなが
ら広い空間をつくりやすいというメリットがあります。これに対して、壁と床の面で建物を支えるのが壁式構造です。低層マンションに用いられ、柱や梁が出ないので室内がすっきりしているという特徴がありますが、壁が建物の構造の一部となっているため、将来のリフォーム時などに、ある程度制約を受ける可能性もあります。
すでに指摘したように、これから建てられる東京23区付近のマンションは新耐震基準に基づいて設計・
施工されるので、大地震が起きても建物が倒壊することはなく、建物内の人命は守られる
はずです。
耐震工法という言葉を聞いたことがある方もいると思いますが、耐震とは地震に耐える、
すなわち建物が倒壊しないという意味です。
耐震性という観点からマンションの構造をみると、「耐震構造」「免震構造」「制震構造」
の三つに大別できます。
こうせい
耐震構造は、地震の揺れを建物全体で受け、建物の"剛性"によって倒壊・崩壊を防ぐ
ものです。免震構造、制震構造以外のマンションはすべて耐震構造といえます。したがっ
て耐震構造自体は一般的なものですから、セールスポイントにはなりません。
倒壊はしないといっても、耐震構造では地面の揺れが直接建物に伝わるので、家旦ハなど
が転倒する恐れがあります。
そこで、地震の揺れが直接建物に伝わるのを防ぐことを目的に開発されたのが免震とい
う技術です。
通常、建物は地盤の上に建っていますが、この建物と地盤を切り離し、地震の揺れが直
接建物に伝わらないようにする構造のことを免震構造といいます。
具体的には、地盤と建物の間に免震装置を置き、地震の際にはその免震装置が地震のエ
ネルギーを吸収して、揺れを低減します。揺れを低減することで地震が起きても建物の損
傷が少なく、家具の転倒も少なくなることが免震構造の特徴です。・王に建物の下部に設置
される免震装置はゴムと鋼板をバウムクーヘンのように何層も重ね合わせた積層ゴムでできています。ゴムに鋼板をはさむことで重い建物荷重からの鉛直方向の力にも耐えるよう
になっていて、日本では二〇年前から施工されていますが、実験では、六〇年後の耐久力
までクリアしています。
ただし、コストが高くなる、免震装置のメンテナンスが必要で修繕積立金の額が高くな
るなどの問題点もあります。その多くは、コストを分散できる超高層マンションや大型マ
ンションにみられます。
制震構造は、地震の揺れを吸収する制震機構が建物に取り付けられているものです。具
体的には地震の揺れを軽減することで建物の損傷を防ぐ効果があります。
マンションによっては、「耐震工法」「免震工法」「制震工法」という表現が使われてい
る場合がありますが、基本的な考えは同じです。免震工法を用いて免震構造のマンション
を建設してあるということです。
こうした東京の中古マンションの耐震性については、パンフレットで確認することができます。た
だし、安全面、費用面の双方を考慮すると、どの構造・工法がベストというものではあり
ません。
する法律」に基づく、住宅性能評価書では、この耐震等級を知ることができます。耐震等
級は、地震に対する建物(構造躯体)の倒壊・崩壊のしにくさを表したものです。
等級は一から三まであり、一番耐震性が高いのは三です。等級一は、建築基準法でその
レベルが決められており「きわめてまれに(数百年に一度程度)発生する地震による力に
対して倒壊・崩壊しない程度」と定義されています。
等級二は、等級一の力の一・二五倍の力でも倒壊・崩壊しない、等級三は同じく一・五
倍の力でも倒壊・崩壊しないことを表しています。
等級の定義をみればわかるように、等級二、等級三になるとより安心できるということ
です。
ハウスメーカーの建てる一戸建の住宅に等級三は多く見られますが、コスト高になるこ
とや柱などが太くなり、プランに制約が増えてしまうなどの理由で等級三の中古マンションは現在のところ、まれにしかありません。
代表的な耐震性設備としては、「耐震枠付き玄関ドア」があげられます。地震の際、揺
れの影響で建物にゆがみが生じ、玄関ドアが開かなくなったという事例があります。
玄関ドアは住民の避難経路ですから、その避難口を確保するために開発されたのが耐震
枠です。ドア枠とドアの間に隙間を設け、地震で枠に多少のゆがみが生じてもドアの開閉
を可能にしています。
とはいえ、たとえ耐震枠付きの玄関でも、ドアロックをかけた状態で地震が起こり、ド
アロックが変形してしまうと、ドアを開けられなくなる恐れがあります。そこで開発され
たのが、「耐震ドアロック」です。ドアロックは従来チェーン式が主流でしたが、耐震ド
アロックはレバー式です。ストッパー部分が上下に可動するタイプや、付け根のクリアラ
ンスを大きくしたものもあります。玄関扉を枠に取り付ける金物のことを「蝶番」といいますが、この蝶番にも耐震蝶番があります。
収納面に配慮した設備もあります。それが「耐震ラッチ」です。建物が揺れた時に収納
スペースのなかにある鍋や食器類などが落下すると、怪我をしたり、逃げるのが遅れる恐
れがあります。
こうした地震による二次災害を防ぐための金物が耐震ラッチで、揺れを感じるとキッチンの吊り戸棚などの扉にロックをかける仕組
みになっています。
地震の際には、建物だけでなく、電気・給排水などの設備配管を守ることも必要です。
地震のあとに、こうしたライフラインを確保するために開発されたのが「耐震用フレキシブル継手」で、配管の継手部分が揺れに対して変形し、破損しない素材でつくられています。
で建物の耐久性も重要なチェックポイントになります。
柱、梁、床などマンションの構造体は、一般にコンクリートと鉄筋でできています。つ
まり、コンクリートと鉄筋の耐久性がマンションの構造体の耐久性を左右するわけです。
コンクリートと鉄筋が耐久性に優れたものであれば、地震などに対する抵抗力も強くなり
ます。
コンクリートの耐久性・強度を示す指標の一つに「水セメント比」があります。コンク
リートは水とセメント、骨材(砂や砂利)などを混ぜてつくります。水セメント比はセメ
ントに加える水の量の割合を百分率で表すもので、数値が高くなるほどコンクリート強度
が低下します。
水分が多い(水セメント比が高い)とセメントを練り混ぜやすくなる半面、コンクリートが固まる際の収縮が大きく、ひび割れが起こりやすくなります。大きなひび割れが起こると、そこから大気中の水分や二酸化炭素などがコンクリート内に浸入しやすくなるので、コンクリート内の鉄筋が錆びやすくなってしまいます。
また、コンクリートは最初はアルカリ性ですが、やがて中性化が進行し、同様にコンクリート内の鉄筋が錆びやすくなっていきます。水セメント比が低くなるほど、中性化の進行が遅くなるといわれています。このように、水セメント比を低くする(水の比率を低くする)ことで、鉄筋コンクリートの耐久性が向上します。
一般に、建築用コンクリートの水セメント比は五〇〜六五%(五〇〜五五%が標準的)です。五〇%に近いほど、耐久性に優れていると判断できます
大半の東京の中古マンションマンションはRC造・SRC造(「C」はコンクリート)ですから、このコンク
リートの強度や施工方法によって、建物の寿命は大きく違ってきます。
コンクリートの強度には引っ張り、曲げ、圧縮など様々な種類がありますが、通常コン
クリートの強度といえば「圧縮強度」のことを指しています。コンクリートは引っ張りや
曲げには弱く、圧縮には強い性質を持っているからです。コンクリートの弱点を引っ張り
や曲げに強い鉄筋で補っているのが鉄筋コンクリートなのです。
この圧縮強度はニュートン(Z\日日、)という単位で表します。ニュートンは、一平方ミリメートル当たりの強度を示すものです。
日本建築学会が決めた耐久年数(大規模補修不要予定期間)は、一八ニュートンで三〇
年、二四ニュートンで六五年、三〇ニュートンになると一〇〇年です。最近の新築マンシ
ョンの大半は、二四ニュートン程度を採用することが多いようです。
たとえば二四ニュートンとは、一〇センチ角の柱に二四トンの力がかかっても耐えられ
る品質という意味です。ニュートンの数値は、構造図面の特記仕様書でチェックできます。
・ニュートンの数値が高いほど強度も高く、耐久年数が伸びていますが、耐久年数に科学的なデータの裏づけがあるわけではなく、あくまでも「予定」にすぎません。
実際の耐久年数は、この数字よりも短くなる可能性があります。
したがって、ニュートンに基づく耐久年数は、参考程度にとどめておきましょう。
中古マンション内のコンクリートが中性化すると、コンクリート内の鉄筋が錆びやすくなるので、耐久性に
悪影響を及ぼします。
中性化の進行を遅らせることができれば、耐久性も向上するわけですが、コンクリート
が中性化する最大の要因は、大気中の二酸化炭素に接することだと考えられています。し
たがって、コンクリートの中性化の進行を防ぐには、鉄筋の表面から大気までのコンクリ
ートを厚くすればいいわけです。
コンクリートの表面から鉄筋までの距離のことを「かぶり厚」といいます。マンション
の土に接しない部分の柱、梁、耐力壁は三〇ミリ以上、耐力壁以外の壁、床は二〇ミリ以
上と建築基準法で定められています。この数値は最低基準で、厚くなるほど耐久性が向上
すると考えられますが、「基準+二〇ミリ」も厚くする場合はメッシュなどの対応が必要
です。
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」で、水セメント比とかぶり厚の標準値を定めています。
住宅性能表示の等級二(公庫・耐久性仕様と同じ)の場合、水セメント比五五%のコンクリートを使うと、壁のコンクリートのかぶり厚は屋内側二〇ミリ、屋外側三〇ミリとしています。
同様に、水セメント比が六〇%になると、かぶり厚はそれぞれ三〇ミリ、四〇ミリと厚くなっています。水セメント比が高くなると、コンクリートが中性化する速度が速くなるので、その分かぶり厚を厚くして中性化を防ぐようにしているのです。
また、等級が三になると(等級が高くなると)、水セメント比が同じならかぶり厚が厚く、かぶり厚が同じなら水セメント比が低くなっています。
なお、ニュートンの数値と同じく、水セメント比もかぶり厚も構造図面の特記仕様書に
記されています。
うのは、軽量気泡コンクリートでできたパネルのことで、建物を軽量化する必要のある超
高層マンションなどで使われています。コンクりートに空気を混ぜ、なかには鉄筋ではな
く鉄線が入っているので、鉄筋コンクリートに比べ耐震性・耐久性で見劣りします。
外壁が鉄筋コンクリートの場合、なかに入れる鉄筋が一列のシングル配筋と、鉄筋が二列のダブル配筋があります。粘りの強さの面でダブル配筋のほうが優れているといえます。
RC造(鉄筋コンクリート造)のマンションでは、主要構造となる柱はコンクリートと
鉄筋を組み合わせたものでつくられ、鉄筋を縦方向に長くつないでいきます。この縦方向
の鉄筋のことを主筋といいます。
地震などの際には、この主筋が曲がってしまう恐れがあります。それを防ぐために、主
筋に対して横方向の「帯筋」を主筋のまわりに巻いています。
一本ずつ巻きつけた帯筋を主筋に引っ掛けて固定するのが一般的ですが、最近では地震
対策として溶接閉鎖型せん断補強筋、スパイラル筋という二つの手法が採用されています。
溶接閉鎖せん断補強筋は、溶接によって鉄筋内部の帯筋を一組ずつ結合させるもので、
横方向のせん断力(真っ二つに割れるような力のこと)を高め、強い拘束力を発揮します。
一方、スパイラル筋は、鉄筋内部の帯筋を継ぎ目のないように主筋にらせん状に巻きつ
けて、横方向のせん断力を高めるものです。継ぎ目がなく、強度が均一なのが最大の特徴
で、耐久力にも優れています。
こうした手法と、耐久性の高いコンクリートを組み合わせることで、より頑丈な建物
(構造躯体)をつくることができます。